自分の居住地の地震津波災害の危険度は?

1993年以降は大地震が頻発!

日本国内で震度6弱以上の揺れが観測された地震の数は、1948〜1992年の45年間ではわずか3件だったが、その後の1993〜2021年の29年間では60件に激増している。 その60件のうち、2010年までの18年間には33件であったが、その後の2021年までの11年間では27件も起きていた。すなわち東日本大震災があった2011年以後では、国内での震度6弱以上の地震の発生頻度が一段と高まっている状況である。

震度6以上の地震:1948〜1992年
震度6以上地震 1992

震度6以上の地震:1993〜2010年
震度6以上地震 2010

震度6以上の地震:2011〜2023年
震源地図 震度6以上 2023
震度6以上地震 2023

今後の大地震の各地域での危険度は?

〔今後30年間,震度6弱以上,全地震の発生確率分布図〕
地震動予測地図 東日本2020
地震動予測地図 西日本2020

〔今後30年間,震度5強以上,浅い地震の発生確率分布図〕
地震動予測地図 浅い地震 東日本
地震動予測地図 浅い地震 西日本

日本列島は大陸から連続するユーラシアプレートと北米プレートの上に存在し、その東側の太平洋プレートと南側のフィリピン海プレートは大陸プレートの下へゆっくりと沈み込んでいる。それらのプレートの境界には、日本海溝、相模トラフ、南海トラフなどの海底の溝が線状に連なっている。海溝・トラフの地下にあるプレート境界や、沈み込んだプレートの内部で起きた地震は「海溝型地震」と定義されている。それとは異なる、大陸側プレートの内部にある活断層や地殻内の概ね30km以内の浅い場所で発生した地震は「活断層型地震」と定義されている。(→地震発生のしくみ)

活断層型地震は、その発生間隔が数千年に及ぶ場合があったり間隔のバラツキも大きいため、予測された発生確率がかなり低い値になっている。しかし、直下型だった"1995年 兵庫県南部地震"、"2004年 新潟県中越地震"、"2016年 熊本地震"、"2018年 北海道胆振東部地震"、"2024年 能登半島地震"では震度7を記録して甚大な被害が生じたように、低い発生確率は今後の大地震の起こりにくさを科学的に予測した数値ではない。

プレート境界地震は、過去にはマグニチュード8級の巨大地震がしばしば起きていて、"2011年 東北地方太平洋沖地震"のようなマグニチュード9以上の超巨大地震が起きることもあり、大津波の被害も加わるため激甚災害となり易い。地震の規模を表す単位のマグニチュード(M)が1上がると、地震のエネルギーは約32倍になる。M8の地震のエネルギーはM6の約1000倍に相当する。富士山に近い駿河湾を起点として紀伊半島の南や四国沖を経由して宮崎県南東の日向灘沖まで約700km続く「南海トラフ」の周辺領域では、M8級以上の巨大地震が今後30年間に起きる確率が70〜80%であると予測されている。しかし、当時の分科会委員だった地震学者たちは、この確率は科学的な数値ではないとする見解を表している。

この他にも、今後30年間にM8級以上の海溝型地震が発生する確率は、千島海溝沿いでは10〜80%程度日本海溝沿いでは10〜30%と予測されている。日向灘及び南西諸島周辺については、過去の記録や津波堆積物の調査から巨大地震の前例があったことは判明しているが、今後の発生確率は不明とされている。相模湾から房総半島の南方沖を経由して伊豆・小笠原海溝まで続く「相模トラフ」の北側領域(南関東地域を含む)では、M8級の地震発生確率は6%以下だが、M7級は70%程度の確率が予測されている。

全国地震動予測地図 2020年版(地震調査研究推進本部)
文部科学省の「地震調査研究推進本部」が作成した、今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率などを日本地図上に表した分布図。海溝型地震や陸上の活断層で発生する地震などの地震タイプ別や、震度の大きさ別など、様々な計算条件による多数の地震動予測地図が公表されている。
都道府県ごとの地震活動(地震調査研究推進本部)
各地域や海域で過去に発生した大地震の特徴や被害の状況、さらに今後その地域に影響すると予測される大地震の発生場所・規模・発生確率などについて解説している。
J-SHIS 地震ハザードステーション(防災科学技術研究所)
主要活断層帯、海溝型地震の震源断層、表層地盤増幅率(地震動の最大振幅に影響)、地震動予測などを、データの種類などを選んで日本地図上に表示できる。詳しく見たい地域を地図上で拡大して表示できる。また「地震ハザードカルテ」という診断ツールでは、日本国内の任意の地点(250mメッシュ)を指定して、地震動に係わる詳しい評価結果を表示できる。
わがまちハザードマップ(国土交通省)
調べたい市区町村を地図上から選択することにより、各自治体の防災マップを公表しているページを表示できる。地震災害に関する想定の内容や公表の有無などは自治体によってまちまちである。また、同サイトの Home page からは、想定される最大規模の津波の浸水深を、地図上で色付けされた任意の地点を拡大して選ぶことにより表示できる。
日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の解説(内閣府)
千島列島の東方から房総半島の東方沖へと続く海溝の周辺で今後発生する巨大地震について、想定される震度・津波・被害や、防災対策による被害の低減効果などを、国の防災計画を担う部署が解説している。
J-THIS 津波ハザードステーション(防災科学技術研究所)
今のところ南海トラフ地震のみを想定した推計結果となっているが、今後30年間に海岸線上で 3m,5m,10m 以上の津波が発生する確率を色分け(3分割)して日本地図上に表示したり、その一部を拡大して細かい確率値を表示したり、想定する震源域などを変えて津波水位上昇量の変化を地図上で示すといった機能があるツール。

海溝型地震に伴う津波の予測

南海トラフの周辺領域で今後発生すると想定されている巨大地震については、それに伴う大津波が到達する海岸線の範囲や津波の高さが一定の条件に基づく確率値として推計され、文部科学省から公表されている。

〔南海トラフ地震,海岸線上,3m超津波の発生確率分布図〕
南海トラフ地震 3m超津波確率 東
南海トラフ地震 3m超津波確率 西

一例として、伊勢湾西岸にある三重県の"津市・松阪市・明和町・伊勢市"の海岸線上では、今後30年間に3m以上の津波が来る確率が比較的高いと予測されている。津市の海岸線上では 10% 未満の確率だが、伊勢市には最高で 39% の地区がある。これらの4市町では 0.5〜5m の浸水深が想定されている地域の面積が比較的広いので、より重点的な減災対策が必要になると思われる。(→津波ハザードマップ)

また、高知県の土佐湾岸に並ぶ"安芸市・芸西村・香南市・南国市・高知市・土佐市・須崎市"の海岸線上では、今後30年間に3m以上の津波が来る確率が一段と高い数値になっている。高知港がある浦戸湾内では 39% 未満の確率だが、安芸市の海岸線上では 41〜61%、香南市では 48〜62%、南国市では 61〜64%、高知市では最高で 65%、土佐市では 26〜66%、須崎市では浦ノ内湾内では 36% 未満だが他は最高で 69% となっている。これらの7市村では 0.5〜10m の浸水深が想定されている地域の面積が比較的広い。巨大地震発生後は他地域からの救援が不足する状況が予想され、かつての疎開のような、個人の自主性に委ねない現実的な生存・都市再生計画を作っておくことが必要かもしれない。(→津波ハザードマップ)

千島海溝や日本海溝の周辺領域で今後起きると予測される巨大地震については、それに伴う最大級の津波に関する推計が行われており、その結果が内閣府から公表されている。その中から最大津波高が特に高い市の一部を挙げると、根室市:22m、釧路市:21m、八戸市:27m、宮古市:30m、釜石市:19m、南相馬市:19m、などとなっている。こちらの推計結果には、海岸に到達する一定の高さの津波の確率値は含まれていない。

地震発生確率が比較的高い活断層帯

いつかは急激にずれ動いてM6〜M7級の地震を起こすと想定されている主要活断層帯のうち、今後30年間に大地震を起こす確率(平均ケース)が比較的高い活断層帯を以下に例示した。それらのデータは J-SHIS Map の中で表示されるものである。(数値は%)

但し、活断層の過去の活動履歴に関するデータは全般的に乏しく不正確であるため、主要活断層帯で今後起きる大地震を予測した数値の信頼性は低いと思われる。近年に発生した直下型の被害地震を見ても、平成28年熊本地震を起こした震源断層での30年以内の地震発生確率(平成25年)は"6%以下"と予測されていたし、平成30年北海道胆振東部地震の震源は、地表で確認できる断層ではなく、深さ約37kmのプレート内部であった。未発見の活断層も多く存在すると考えられている。

富士宮市から駿河湾にかけて多数の断層が縦断する「富士川河口断層帯」では、今後30年間に M8級 の地震が起きる確率は"18%以下"と予測されている。この断層帯は、過去に駿河トラフ附近で発生した海溝型地震に伴って活動してきたと推定されており、今後の想定東海地震などの際にも連動してずれ動くおそれがある。

大地震を起こす活断層のずれは、海溝型の巨大地震を起こす地殻変動の一環として今後も活発化すると予想される。特に主要活断層帯が近い地域では、万一の地震災害への備えの強化が必要かもしれない。

地震予測 関連記事

細別した地点の地震危険度

前掲の地震発生確率の分布図では確率表示が5段階であるため、特に確率が最も高い地域でのより詳しい確率分布が分からない。しかし「J-SHIS 地震ハザードカルテ」を利用すれば、次に例示したように細別した地点の地震危険度の詳細な評価結果を知ることが出来る。例えば、茨城県ひたちなか市釈迦町附近では、今後30年間に震度5強以上の揺れが起きる確率は100%などと表示される。

〔地震危険度 評価結果 縮小画像〕

自治体が公表している地震津波防災マップ(一部)

〔北海道・東北地方〕
〔関東地方〕
〔中部地方〕
〔近畿地方〕
〔中国・四国地方〕
〔九州・沖縄地方〕

地盤の構造と地震被害

軟弱地盤が揺れを増幅する
砂粒子の密度が低い軟弱な地層ほど、地震動が増幅されやすい。沖積層(河川による堆積物)や埋立地などの軟弱地層は、硬い岩盤などに比べて固有周期が長く、その地層が厚くなるほど固有周期も長くなる。そして、地震波に多く含まれる0.5〜1秒ほどの周期の波との共振現象によって、軟弱地盤は大きく振動する。
地盤の液状化現象
強い地震の際に、河川の下流域の平野埋立地、造成地などの、砂が多く水を含んだ地盤が振動によって流動した結果、多量の水や砂が地表に流出したり、地盤沈下などを引き起こし、マンホールが地上に浮き上がったり、建造物が傾いたり損壊するなどの重大な被害を発生させる。

地震による山や崖の崩壊

大雨では崩れることがなかった山の斜面や崖であっても、大きな地震動があれば斜面が瞬時に不安定になり、緩やかな斜面でも地すべりが起きたり、山の表土が大規模に崩落したり、土石流が生じることがある。また、地震動によって崩落した斜面の附近では、地震で崩れなかった場所においても、その後の大雨によって斜面が大きく崩壊する現象などが起こりやすい。

"平成28年 熊本地震"では、最大震度7の地震が2回、最大震度6弱〜6強の地震が5回発生し、その地震動によって阿蘇山の周辺の広い範囲で、斜面の崩壊や地すべりが多発した。そして地震災害から2か月後の大雨によって、新たな斜面崩壊や土砂災害が多発した。以下の地図の中心地点では、地震の際に大規模な斜面崩壊が発生し、山麓の渓谷に架けられた阿蘇大橋が崩落した。

"平成30年 北海道胆振東部地震"の際には、おもに厚真町において、崩壊警戒区域として指定されていない場所も含めて多くの山の斜面で地すべりや土石流が発生し、建物などに大きな被害が生じた。以下の地図の中心地点の周辺では、地震の際に大規模な斜面崩壊による被害が数多く発生した。

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[Updated 2024-02-25]