認知症・軽度認知障害の早期発見

人が老化に伴って認知症になってしまう要因は、その人の食事・生活習慣が深く係わっていて、糖尿病や血糖値(HbA1c)が高めの状態、高血圧、動脈硬化、肥満、必須栄養素の摂取不足、日光浴またはビタミンD摂取の不足、短く浅い睡眠の習慣、歯周病などにより失った歯の多さ、難聴、孤独で不活発な生活、などが知られている。

認知症と診断されると、治療によって脳が元の正常な状態に戻ることはなく、病状が悪化するほど薬剤も効きにくくなってしまう。しかし、日常生活には大きな支障がない程度の「軽度認知障害(MCI)」の段階であれば、生活習慣病の治療や、食事・生活の悪習慣の改善、脳神経の働きを活発にする活動の継続などによって、認知症への進行を防ぐことも不可能ではない。

認知症はいくつかのタイプに分類されており、その原因の割合が最も多いものが「アルツハイマー病」である。 加齢に伴って「アミロイドβ」などの有害な蛋白質が脳に多く蓄積してしまうと、神経細胞が徐々に壊れてゆき、特に近時記憶の機能をもつ部位(海馬)から脳の体積が縮小してゆく疾患=アルツハイマー病を発症すると考えられている。脳が委縮した状態はMRI検査等の脳の画像検査によって確認できる。

その他に「レビー小体型認知症」や「血管性認知症」などの種類があり、それぞれの症状や原因には異なる特徴がある。アルツハイマー病と血管性認知症の両方の要因を併せ持つような「混合型認知症」が少なくない。

認知症の主な症状には、最近体験した事を覚えていないなどの記憶障害や、今の時刻・場所が分からない、道に迷う、言葉が出てこない、相手の話を理解できない、料理・片付け・計算などができない、服装の異変、意欲の低下、抑うつ、怒りっぽくなる、頑固になる、睡眠障害嗅覚低下、失禁、幻覚、などがある。認知症と紛らわしい疾病には「うつ病」などの様々な疾病があるため、認知症を正確に診断することは専門医であっても難しいという。

ちなみに「認知症」という用語は、2004年に厚生労働省が「痴呆」に替わる適正な行政用語として「認知症」に改めてから一般化したものである。医学用語としては「痴呆」が用いられることもある。

認知症の発症には様々な生活習慣病が影響していることが多いので、がん(悪性腫瘍)などの潜在する疾患を早期に見つけて今後の医療・介護費用を軽減するためにも、人間ドックを毎年受診して自身の現状を詳しく知り、弱点の改善を図ることが重要である。

人間ドックの費用は全額自己負担が原則だが、加入している健康保険の保険者(市町村や健保組合等)によっては費用補助が受けられる。健診施設を選ぶ際には、料金やオプション検査の種類等を確認することに加えて、加入健保の費用補助に対応しているか否かも確認した方がよい。国民健康保険の健診費用助成制度の詳細は、各市町村のウェブサイトで案内されている。人間ドックの標準の検査内容は健診施設が決めているが、費用補助を受ける場合の検査項目は保険者が指定したものになる。しかし重要な検査項目の多くは共通している。

近年は全国各地の一部の医療機関に申し込めば、少量の採血と専門会社での精密検査(料金自己負担)によって、今後認知症を発症するおそれがどの程度あるのかを表す危険度を知ることができる。 その検査技術には着眼点が異なるいくつかの方式があり、脳でのアミロイドβの蓄積を防いだり毒性を弱める働きをする特定の蛋白質について調べる方法や、アルツハイマー病の発症に関わる特定のペプチド(蛋白質を構成する化合物)の血中濃度を測定する方法や、アミロイドβの蓄積に関わる遺伝子のタイプを調べる方法などが実用化されている。

検査の結果から発症リスクが高いと判定された場合には、医師や保健師からの指導に従って、食事・身体活動習慣などを改善する行動を自ら継続することが肝要である。そうすることにより、認知症の発症を遅らせたり軽い症状に抑えたりすることが可能になる。 また、低リスクの判定が出ればひと安心だが、検査によって未来が確定する訳ではないので油断大敵だ。

[Updated 2024-01-20]