動脈硬化の悪化を防いで認知症を予防

動脈の血管壁が厚くなったり硬くなったりして、本来の構造が変形した動脈の病変のことを「動脈硬化」という。柔らかいチーズのような粥状(シュクジョウ)物質が動脈の内膜に沈着して肥厚し、血管の内腔が狭くなった粥状動脈硬化が一般的によく起こる。 現在の動脈硬化の状態は、頸動脈エコー検査血圧脈波検査眼底検査などによって知ることができる。

動脈硬化を進行させる危険因子には、高血圧、高血糖、脂質異常症、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなどがある。 高血圧の判断については、健診などで日中に測定した血圧が 140/90mmHg 未満であっても、夜間や早朝の血圧の平均が 120/70mmHg 以上の場合などは高血圧と診断されるので、時間帯による血圧の変動にも留意する必要がある。

また、人間ドックの際に一部の施設では検査できる「血中ホモシステイン値」が高い場合についても、動脈硬化や循環器病の悪化、死亡率の高さに関連していることが報告されている。

高血圧や糖尿病などが原因で発病する慢性腎臓病も、動脈硬化を悪化させる要因になることが知られている。慢性腎臓病になると心血管疾患や脳卒中を起こす危険性が一段と高まるので、腎機能を早い段階で検査してその低下を予防することも大切だ。

そして、歯磨き中に出血があったり歯肉が下がってきていても歯科に行かず放置していると、動脈硬化を悪化させる恐れが高まる。歯周病になると口内の有害な細菌や炎症性物質が容易に血管内に入る状態になり、それらが血管内を傷つけて動脈硬化を起こす一つの原因になっていることも報告されている。

これらの複数の危険因子が重なると、動脈硬化は一層促進されることになる。特に飲酒習慣のある男性は、強い痛みが出る痛風尿路結石の原因である高尿酸血症を防ぐことにも注意する必要がある。

65歳以上の高齢者の死亡原因について2021年の「人口動態統計」のデータをみると、悪性新生物(腫瘍)の割合が 25.6% と最も多かったが、動脈硬化が関与している可能性が高い、心疾患(急性心筋梗塞,虚血性心疾患,心筋症,心不全)・脳血管疾患(くも膜下出血,脳内出血,脳梗塞等)・大動脈瘤/解離を合わせた割合は 19.0% であった。

動脈硬化が悪化するいくつかの要因(危険因子)は、前述の病気によって余命を縮めるだけでなく、血管性認知症アルツハイマー病を発症させる恐れも高めるので、将来の医療・介護費用の負担をより重くしやすい。

老化に伴って病弱になり経済的にも困窮するような事態を避けるためには、特定健診や人間ドックを定期的に受診して自身の健康上の弱点と変化を理解し、その上で適切に治療したり、過食・偏食や運動不足などの悪い生活習慣を正しく改善していくことが必要である。 ちなみに、濃い味付けの食品を好み、その結果として塩分を摂り過ぎて高血圧になっている人の場合は、味覚障害が起因していることもある。

適度な運動(有酸素運動)によって血流が加速されると、血管の内皮細胞から一酸化窒素(NO)が多く分泌される。この"NO"には、血管を拡張して血圧を下げたり、血液が固まるのを防いだり、血管へのLDL(悪玉)コレステロールの沈着を防ぐ作用がある。 有酸素運動の習慣は、血中の中性脂肪を減らしたり、悪玉コレステロールを回収する善玉コレステロールを増やす効果があるので、"NO"の作用と共に動脈硬化の進行を抑制し、循環器病や認知症の発症リスクを低下させることになる。

目標としたい有酸素運動の時間や強度は、1分間の心拍数が100を超えるくらいの強さの早歩きやジョギングなどの運動を、1日あたり合計30分以上、1週間に150分ほど行うこととされている。もちろん自身の体力に応じて、無理をせずに日数をかけて徐々に運動量をふやしてゆく必要がある。

動脈硬化を悪化させないためには食習慣を改善することも欠かせない。毎朝同じ時刻に起床して日光を目に入れ、朝食を規則的にとり、朝・昼・夕の食事の栄養バランスを適正に調整し、夕食を朝食から12時間以内に食べ終えて、夕食後に間食を摂らないことを習慣にすると、そうしない場合に比べて糖尿病脳出血や他の循環器病のリスクが顕著に下がる可能性があることが、いくつかの研究によって示されている。

[Updated 2024-03-14]