嗅覚の低下を防いで認知症を予防

アルツハイマー病レビー小体型認知症の患者では、ニオイを感じにくい「嗅覚障害」が発症の初期段階から確認されることが多い。そして患者の多くは嗅覚(キュウカク)の低下を自覚していない。高齢になるほど匂いを感じる能力が低下する傾向があり、特に70歳以降では変化の程度が大きくなる。

嗅覚障害があると食事の喜びや満足感が減ってしまうばかりか、食物の腐敗臭や鍋の焦げ、煙、可燃性ガスなどの危険なニオイに気付かない。そのため特に独居老人などは、栄養不良による衰弱・病気や、火災などの事故につながる恐れがある。

嗅覚が低下する原因は、一般的には鼻炎副鼻腔炎などの鼻疾患が原因になっていることが多い。嗅覚の異常を自覚したり他人から指摘された場合には、専門医(耳鼻咽喉科)による診察を受けるのが望ましい。

食物から摂取する亜鉛ビタミンB12などが欠乏していると、ニオイ分子を捉える嗅細胞や嗅神経の機能に障害が起こりやすいと考えられている。

食事から摂取するビタミンB12の推奨量は、12歳以上の男女では 2.4μg/1日 とされており、平均の摂取状況では推奨量を大きく上回っている。しかし、胃酸不足や胃炎小腸での吸収不良などがある場合にはビタミンB12が欠乏することがある。

また亜鉛の推奨摂取量は、12歳以上の男性では 10〜12mg/1日、12歳以上の女性では 8mg/1日 とされており、平均の摂取状況では男女共に推奨量を少し下回っている。食品から摂取した亜鉛が体に吸収される割合は低く、豆類・穀類・アルコールや消化器疾患は吸収率を低下させる。要介護高齢者では、味覚障害・皮膚炎・食欲減退・脱毛などがある亜鉛欠乏症が多くみられる。

亜鉛とビタミンB12が多く含まれる食品とその含有量は、例えば次の通り。(亜鉛=mg,VB12=μg/100g) 牡蠣水煮(18:24)、からすみ/ボラ(9.3:28)、スモークレバー/豚(8.7:24)、さば節(8.4:6.0)、田作り/カタクチイワシ(7.9:65)、パルメザン・チーズ(7.3:2.5)、煮干し/カタクチイワシ(7.2:41)、牛肩肉ゆで(7.2:2.9)、しじみ水煮(4.0:82)、干し海苔/アマノリ(3.7:78)、あさり缶詰(3.4:64)、赤貝(1.5:59)、味付け海苔(3.7:58)、すじこ(2.2:54)、牛レバー(3.8:53)、イクラ(2.1:47)、はまぐり佃煮(4.2:45)など。(→食品成分データベース)

鼻炎などの症状がなく匂いが分かりにくい場合に、意識して香りを嗅ぐ嗅覚トレーニング(嗅覚刺激法)を続けると嗅覚が改善することがある。ドイツでは、嗅覚障害がある人を対象に、バラ、ユーカリ、レモン、クローブの複数種類のニオイを1日2回、数秒間かぐことを12週間続ける実験を行ったところ、嗅覚の改善が認められたという報告がある。

健常高齢者を対象に、市販されている精油を使ったアロマセラピーを一定時間・12週間実施し、認知機能の改善効果を検証した実験では、注意機能検査の得点が、アロマの介入後に改善したことが確認された。

鳥取県米子市の老人保健施設の入所者(認知症患者を含む)を対象として、精油の香りを昼と夜で変えるアロマセラピーを4週間実施した効果の検証では、アルツハイマー病の患者群において知的機能の改善傾向が認められたことが報告されている。

[Updated 2024-01-21]