有酸素運動や筋トレが認知症を予防・改善する

認知症の予防のためにも、最近の平均的な血糖値を表す「HbA1c値」を正常範囲内に維持することがとても重要である。過食、運動不足、強いストレスなどによってインスリン感受性が低下してゆくと、血糖値を下げるためにより多くのインスリンが必要になり、この状態が続くと膵臓が弱ってインスリンが分泌されにくくなる。そして高血糖の状態が慢性的に続く糖尿病になってしまう。 糖尿病になると様々な慢性合併症に悩まされることになり、脳の機能も低下しやすくなる。

空腹時の血糖値が正常範囲内であっても、食後2時間以上たった時点の血糖値が正常範囲を上回っていれば「食後高血糖」の状態である。この状態を放置すれば糖尿病へと進行する恐れがあり、動脈硬化が促進されるので、突然死のリスクもある心疾患を発症する恐れもある。

食事で摂る糖質の量が多いほど、食後に上昇する血糖値のピークもより高くなる。食後の血糖値の過度な上昇を抑えるためには、パン・麺類・白米などの糖質を多く含む食品の量を減らしたり、食物繊維を多く含む野菜・きのこ・海藻などを先に食べるようにしたり、蛋白質・脂質が多い肉・魚・卵などを糖質が多い主食よりも先にやや多めに食べるようにしたり、意識的によく噛んで時間をかけて食べる、といった工夫や意識を持続することがまず大切である。

特に夕食の場合は、一般的には食後の身体活動量が少ないので、食後高血糖が起こりやすいと考えられる。肥満を予防・改善するためにも、夕食では腹八分を心掛ける事と糖質の摂取量を少なくすることが重要になる。

食事を終えた30分後から60分後の間に早歩き筋トレ(レジスタンス運動)をすると、食後の血糖値の上昇率が運動しない場合よりも下がったり、食後に上昇した血糖値が正常範囲まで下がったりすることが実験により確かめられている。そして骨格筋の筋肉量がふえるほどインスリン感受性が高くなり、血糖値が下がりやすくなる。また、夕方〜就寝3時間前に適度の運動をすると、睡眠の質が高まる。(→快眠と生活習慣)

但し食物アレルギーがある人の場合は、食後の運動によって急に重い症状(運動誘発アレルギー反応)が表れる事があるので、それを防ぐためには運動負荷を軽くしたり、アレルギー専門医などに相談して自身の適切な運動方法を知っておくことが望ましい。

筋肉量をふやして体脂肪率を下げるためには、十分な量のたんぱく質を朝・昼・夕の食事で摂ることも必要だ。特に朝食でたんぱく質を多めに摂ることが筋肉量の増加には効果的である、という研究報告がある。また、朝食を毎日とり、朝食後から12時間以内に夕食を終え、夕食後は間食をしないという習慣は、高血糖などを改善し、深刻な循環器病を防ぐ効果を高めることになる。

自身の血糖値は、勤務先の定期健診や市町村の特定健診の際に採血して、検査結果が通知されて分かる場合が一般的だ。そうした機会がない場合でも、一部の薬局・薬店では、簡易な方式で微量の血液を採取し、血糖値のほか血中脂質や肝機能関連の測定を行える場合がある(→ゆびさきセルフ測定室)。 また、糖尿病の治療を受けている場合は、血糖自己測定器を使って一日の血糖値の変動を記録することを医師から勧められることがある。しかし、医師の指導によらず独自に血糖測定器を買って使うことは避けた方がよい。

太っている(BMIが高い)人や体脂肪率が高めの(筋肉量が少ない)人では、血糖値が正常上限を超えやすい。自身の血糖値を短期間で度々測ることは難しいが、簡単に計測できる体格指数(BMI)や体脂肪率を頻繁に測定・記録し、その数値が改善するように努めることが、血糖値などの着実な改善につながるはずだ。

ウォーキング等の有酸素運動筋トレを習慣として続けると、高めの血糖値(HbA1c)が下がることにより脳の血管や神経細胞へのダメージが減少したり、神経細胞の成長を促す栄養分(BDNF)が多く作られたり、脳の働きを高める神経伝達物質がふえたりすることが判明している。また実験結果から、運動の習慣化による脳機能の改善の度合いは、内臓脂肪が減少したことと関連していることが報告されている。

軽度認知障害(MCI)がある男女100人に、筋力トレーニングを週2回・半年間、運動強度を徐々に上げながら続けてもらった実験では、認知能力に関わる脳の領域が大きくなったことが確認され、参加者の多くは脳機能が改善したことを実感できたと報告されている。 また、MCIの人を含む高齢者31人を対象に、筋トレを中心とした介護予防教室に週1回・3箇月間通ってもらい検査した結果、全体として記憶力の改善が認められ、MCI群では記憶力が健常高齢者(筋トレ実施前)と同程度まで改善していた、という報告がある。

65歳以上の健常高齢者202人を対象とした1年間の実験の結果では、指導された体操だけを週1回・1時間実施したグループにおいて、記憶力の向上脳の前頭葉の容積増大が確認されたが、音楽に合わせて同様の体操をしたグループでは、全般的知能を表す点数なども向上したことが報告されている。

ウォーキングをする時は、2〜3分毎に通常の歩行と早歩きを交互に変える歩き方(インターバル速歩)をすると、きつい運動をするよりも効率的に体脂肪率が減少し、インスリン感受性もより効果的に高められることが報告されている。また、有酸素運動をしながら、引き算や'しりとり'などの「頭の体操」を同時に行うこと(デュアルタスク)により、より効果的に脳機能を改善できる。

中高年者の高めの体脂肪率や高血糖(HbA1c値)などの原因には、インスリン以外のホルモン分泌量の減少も関わっていることが少なくないようだ。例えば成長ホルモンには、内臓脂肪の減少、筋肉の増強、骨密度の上昇を促進するなどの健康維持のための多様な作用があるが、その分泌量は加齢に伴って大きく減少する傾向がある。

しかし、アミノ酸の一種のアルギニンオルニチンを摂取すると、成長ホルモンの分泌が促進されることが報告されている。アルギニンの含有量は、大豆、まぐろ、鶏卵、ニンニクなどに多く、アルギニン等のアミノ酸を多く含む栄養補助食品も多様な商品がある。食品中のオルニチンの含有量は少なく、比較的多いのが"しじみ"で、まぐろ、チーズ、ヒラメなどに少量が含まれる。サプリ等による過剰なオルニチンの摂取は避けた方がよい。

疲れやすい、やる気が出ない、肥満、皮膚の乾燥などの自身の症状についてホルモン分泌不全が関わっていないかを調べるためには、(内科医等に紹介状を書いてもらい)内分泌の専門医を受診することが望ましい。

おもに男性の精巣から分泌されるホルモンのテストステロンには、筋肉量の増大、内臓脂肪の減少、インスリン感受性の改善、挑戦意欲の向上などを促進する作用がある。しかし血中の利用可能な「遊離テストステロン」の濃度は、一般的に加齢に伴って徐々に低下してゆく。テストステロンの分泌量をふやすためには、蛋白質の不足や糖質の過剰摂取を防ぎ、抗酸化作用の強い食品を多く食べ、有酸素運動や筋トレを習慣化し、友人との交流でストレス解消を図るようにすると、分泌を促進する作用が強まるようだ。

[Updated 2024-01-20]